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森の住人 クマタカ

by AIKO SENZAKI, photo by HIRAKU SENZAKI

クマタカ Nisaetus nipalensis 2017.11 Hokkaido


バードウォッチャーにとって、日本で記録されている650種を超える魅力的な鳥の中から、たった1種を選ぶことほど難しいことはありません。でも、大人数のアイドルグループの中に贔屓にしている1人がいるように、大抵は惚れ込んでいる鳥があるものです。

私の休日は、早朝、車内の寝袋から抜け出し、水筒に持参したお湯でゆっくりコーヒーを淹れることから始まります。曇った双眼鏡のレンズをそっと手で温めた後、慎重に森の斜面を眺めると……、いました!クマタカです。大きな広葉樹の横枝に止まり、全身の羽をふっくらと膨らませ、羽繕いをして休んでいます。コーヒーをすすり終わる頃には、頭を傾げ、斜面の下の方をじっと見つめはじめました。アッと思ったのも束の間、枝から音もなく飛び立ち、力強く羽ばたいてどんどん加速すると、翼をすぼめて針葉樹の上部へ飛び込んだ!ハンティングの瞬間です。双眼鏡を覗いたまま一心に見つめ待っていると、足にリスを掴んだクマタカが悠々と木の中から現れ、大きな翼を広げ、くるくると旋回上昇した後、滑るように飛び去りました。

クマタカは、主に森に棲む小型〜中型の生き物を獲物としています。ノウサギやリスなどの哺乳類、カケスやエゾライチョウなどの鳥類、ヘビ・トカゲ類、時には猟師の捨てたシカの残りを食べることも。何時間も辛抱強く木に止まり、獲物に襲いかかる隙を狙うこともあれば、ゆっくりと樹林の上空をなめるように飛んだり、林の中を木から木へと転々と移動して獲物を探すなど、実に多様なハンティング方法を身につけています。また、つがいあたり約8〜48㎢もの面積を行動範囲としていることがわかっており、たくさんの生き物が棲む豊かな森林を、ダイナミックに利用して暮らしていることが伺えます。一所から見渡せる範囲の森のほとんどすべてが自分の家であり、知り尽くした庭である様子を想像するとわくわくしませんか?観察をしていると、私もクマタカになって一緒に空と森を飛び回っているような、そんな気持ちになれるのです。